悪性リンパ腫 白血病 レポート

第18回日本癌学会市民公開講座レポート

●日時:2011年10月2日(日)
●会場:名古屋国際会議場

一般の人向けの講座に参加してきました!
テーマは「がんとの共存から克服へ、そして未来へ」で、5人の先生が20分くらいずつ講演をしてくださいました。

そんなに混まないだろう、と思ってぎりぎりに行ったらすごい人!
がんに関心がある人、多いんですねえ。

↓公開講座の内容を以下にまとめました

1. 効果的ながん予防

(愛知県がんセンター研究所 田中英夫先生)

<がんにかかる要因について>
・がんにかかる要因は、遺伝的要因、環境的要因の2つ。
・遺伝的要因の例:遺伝性非ポリポーシス大腸癌
・環境的要因の例:中皮腫、肝細胞癌、肺癌など
・がんと関係がある遺伝子は30種類あり、DNAは両親から1セットずつもらって計2セットあるので、がんと関係がある遺伝子は計60個。
・リスクを持つ人同士で比較すると、現在85歳以上の長寿の人と現在中年の人で差が無い→遺伝的要因は影響少ない。環境的要因の方が影響が大きい。

<がんの予防について>
がんの予防には以下の3つ。
@がんにならない:ウイルスが原因でがんになる場合。肝炎ウイルスへの感染予防や慢性ウイルス肝炎の治療などで可能。
Aがんになる年齢を遅くする:禁煙する、食事習慣を改善することで可能。
B進行がんを予防する:がん検診を受ける
・肝臓がんの原因は75〜80%がC型慢性肝炎、肝硬変
・喫煙について
 70歳での生存率・・・非喫煙者81%に対し、喫煙者58%。
 早い年齢で禁煙すれば生存率は上がる。
 35〜44歳で禁煙すれば非喫煙者の生存曲線とかなり近い生存曲線になる。

・アルコールについて
 アルコール→アセトアルデヒドに分解→酢酸に分解
 アセトアルデヒドが有毒で、発がん性あり。
 アセトアルデヒドを分解できない人はすぐに顔が赤くなる。
 お酒の弱い人はアセトアルデヒドを酢酸に分解できないので、それだけ発がんリスクが高いと言える。

・酒の強さと肺がんとの関係
 たばこの中にもアセトアルデヒドが含まれる。
 →酒に弱い人はたばこを吸った時のがん発生率が高くなる
・胃がん検診受診率の高い県ほど生存率が高い=検診は有効
・日本人の乳がんの遺伝子多型は7種類、計14個。遺伝子変異の数が多いグループほど乳がんになりやすい

<フロアからの質問>
Q. 食事の取り方はどうすればよいか?
A.
・まずは野菜を取ること。野菜に含まれる抗酸化物質が有効。ヨウ酸はDNA合成の材料になるのでDNA修復に有効。
・塩分は控えめにする
・肥満も良くない。BMI 27以上は危険

Q. お酒は「百薬の長」というが、どう解釈すればよいのか?
A.
・少量たしなむことは循環器疾患の予防には有効。
・アセトアルデヒド分解酵素を持っていない人は飲みすぎないよう注意。
・アセトアルデヒド分解酵素を持っているお酒に強い人は、「1日3合を週5日」のような飲み方をしなければ大丈夫。

2. がんの薬物療法最前線

(名古屋市立大学 上田龍三先生)

分子標的治療などについての話でしたが、早すぎてついていけませんでした・・・

<フロアからの質問>
Q. 分子標的治療薬は今後主流になる?
A.
全てのがんで分子標的治療薬は無理。
分子マーカーを利用して早期診断ができるようになる。早く見つかれば治る確率は高くなる。

Q. ドラック・ラグの背景は?
A.
・薬の承認システムの問題→もっと職員を増やす、承認システムを見直すなどの対応をする必要がある。
・行政面の問題:日本は国民皆保険だから何でもかんでも承認するわけにはいかない。

3. がん幹細胞とは何か?

(慶応義塾大学 佐谷秀行先生)

・皮膚は上皮の下に基底膜という構造があり、そこに幹細胞が存在する。
幹細胞の分裂はゆっくり。幹細胞が分裂して一部前駆細胞になり、前駆細胞が上皮細胞になり、上皮細胞が上へ上へと移動していって最後に垢になって剥がれ落ちる。周期は28日。

・がんを構成する細胞は同じ性質のものではない。特定の細胞を起源とする、様々な細胞が存在する。

・がん幹細胞=がんの起源となる細胞

・がん幹細胞はストレスに強い
なぜかというと・・・
@増殖速度が遅いから
A薬剤排出能力が高いから
B免疫抑制物質を分泌するから
C酸化ストレスを抑制する能力が高いから

・CD44:がん幹細胞に多く発現しているタンパク質
 CD44vが発現している細胞はグルタチオン合成能が高い=酸化ストレスに強い。細胞外からシスチンをとりこむから。

・最近人工がん幹細胞(induced cancer stem cell = iCSC)の作製が可能になった。
がん形成のメカニズム解明や治療薬の探索に有効。

<フロアからの質問>
Q. がん幹細胞は早期に見つけることができるのか?
A.
がん幹細胞は正常細胞に似ているため難しい。

Q. 浸潤転移がんでもがん幹細胞をたたくことで効果はあるのか?
A.
効果はある。

4. がんの免疫療法研究の展望

(愛知県がんセンター 葛島清隆先生)

<がんに対する免疫療法>
@非特異的免疫療法:がんの種類に関係なし
A特異的免疫療法:特定抗原に対する免疫を活性化
・中心:キラーT細胞
(例)がんワクチン療法:体内のキラーT細胞を抗原で刺激して活性化させる

・がんワクチン療法
(1) ペプチドの皮下注射
樹状細胞がペプチドをキラーT細胞に抗原提示
→キラーT細胞がペプチドを認識して活性化
(2) タンパク質の皮下注射
樹状細胞がタンパク質を取り込み、細胞内で分解して、ペプチドをキラーT細胞に抗原提示
→キラーT細胞がペプチドを認識して活性化
(3) 樹状細胞療法
単球を樹状細胞に分化させる
→ペプチドを加え、その樹状細胞に提示させる
→キラーT細胞がペプチドを認識して活性化
(4) キラーT細胞を増やして戻す治療法

・がんワクチンの治験:
現在5個の治験が行われている。ペプチドワクチン3種類、タンパクワクチン2種類。

・FDAは前立腺がんのワクチンを認可済み
非投与群の無病生存率(?)が21か月だったのに対し、投与群では25か月だった。

・制御性T細胞がキラーT細胞の働きを抑制する

・無治療でも自然治癒することがある

・免疫療法はがんが小さいときの方が効果がある

<フロアからの質問>
Q. 患者さんは免疫力が弱っているが、免疫活性化の効果はどの程度あるのか?
A.
患者さん個人や、がんのステージによって違う。

Q. 再発がんでも効果はあるのか?
A.
評価が難しい。前立腺がんでの効果は証明済み。

Q. 免疫療法は今後安くなるのか?
A.
・民間免疫療法に関しては、仕組み上難しい
・保険に組み込めることができれば安くなる

Q. 普通の免疫力を上げることでがんを抑えることはできるのか?
A.
がん予防に効果的といわれる食生活を送ることによって、がん抑制にある程度寄与すると考えられる。

5. 天寿がん思想とその進展

(がん研究会がん研究所 北川知行先生)

・天寿がん思想:がんと折り合いをつけて、生きる道を広くする考え方
・超高齢者=男性80歳以上、女性は90歳以上
・超高齢者の在宅がん死の約30%は天寿がん。
・天寿がんは無理でも、準天寿がんは可能。疼痛緩和療法が進歩してきているから。

<フロアからの質問>
Q. 天寿がんでは全体では何パーセント?
A.
全体では分からない。在宅がん死では約30%。

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